「名付けようのない踊り」から見た、好きなアーティストの共通点


前回、田中泯さん出演の映画「名付けようのない踊り」の感想を書きまして。

「名付けようのない踊り」、【速度を受肉して踊る】ということ。

今回は、田中泯さんと、私が好きなアーティストたちとの共通点を勝手に模索していこうと思います。

目次

1.【偶然性】:DIR EN GREY 京
2.【踊る体】:土屋太鳳
3.【長く生きる故の】:篠田桃紅
4.おわりに

1.【偶然性】:DIR EN GREY 京


泯さんは、一定の振り付けを守るダンスではなく、
その場の空間・音楽・立ち会った生き物などの影響をそのまま取り入れて即興で踊る、
「場踊り」というパフォーマンスをします。

私が大好きなバンドDIR EN GREYのボーカル・京さんも、ライブのときはCD通りに歌うというより、
その場・その時の空間で、歌詩やメロディを変えて歌うことが多々ありました。
ときには、舞踊のような「そのときの空気」にしか動かせない体の動きをすることもあります。

結局、私は『その瞬間にしか立ち会えない偶然への運命性』みたいなものが好きなんだな、と思います。

台本のある舞台だって、昨日と今日の演技は違うじゃないですか。
(ちなみに私は「日替わり」と呼ばれる、舞台中に即興で行われるやりとりが大好物なんですが…!)

極端なことを言えば、好きな映画や音楽を繰り返し繰り返し飽きるまで視聴するのも大好きで。

それだって「昨日抱いた感想と今日抱いた感想は違う」だとか、
「何万回も聞いてるはずなのに、やっと今日こんなことに気付いた!」とか、
「今の風景と今の音楽めちゃくちゃ合うなぁ…」とか、
「あの出来事を経て、今この曲を聞くと、なんだか一段としみるなぁ…」とか、
そういう『同じことの繰り返しの中にもある、なんらかの変化』が好きだったりするんですよね。

泯さんや京さんが体現しているのは、
『その場・その瞬間でしか得られないもの、表せられないもの』で、
それらを可視化してくれるアーティストが私は大好きなんだなぁ、と思い至ったのでした。

ということで、ひとつめの共通点。
泯さんと京さんは、『そのときにしか表現できないもの』
偶然への運命性を可視化する存在

こちらはDIR EN GREY公式YouTubeより配信されているMusicVideoです。
私が大好きな「Ranunculus」という曲をどうぞ。

2.【踊る体】:土屋太鳳


泯さんと太鳳さんは、映画「るろうに剣心」と、朝ドラ「まれ」で共演されていまして、
どちらもおじいちゃんと孫(るろ剣ではそれに近い関係性)という組み合わせでの共演で、
個人的にとっても好きな組み合わせのお二人です。


私、太鳳さんのことは、演技のことよりも先にダンスをされているお姿を拝見して、大好きになったんでした。
そのきっかけになったのがこちら。

Sia「Alive」の曲で踊る土屋太鳳さん。
初めて見たとき鳥肌が立ちました。

その後、友人が誘ってくれて、太鳳さんが出演する映画「累-かさね-」のエキストラに参加させていただきまして。
劇中劇の「サロメ」を上演するシーンの撮影を、観客の一人として見させてもらったのですが。

(YouTubeで東宝公式アカウントで、太鳳さんのダンスシーンのメイキング動画がUPされてました。
 正直申し上げて、動画で見るのと生で見るのとは大違いなんですが…雰囲気だけでも…!)

太鳳さん演じるニナ/累が、劇中劇「サロメ」の中で踊るシーンがありまして。
(なぜ役名が2つあるのかは、その、映画や原作漫画を見てもろて…!)
(太鳳さんとダブル主演の芳根京子さんも大注目です。誰が誰を演じてその上劇中劇で誰を演じるのか、何層の人格が積みあがった上の表層なのか、ぜひとも混乱しつつ感動を味わってほしいです)

何回もYouTubeで見ていた太鳳さんの踊りを、目の前で見たときの、その迫力といったら。

リハーサルや、カメラの位置を変えての複数回の本番など、ひたすら踊る太鳳さん。
カメラが回っていないときは、柔軟をしたり、体の状態を整えたりと、自分の体に向き合う太鳳さん。
何回も踊っているのに疲れがまったく表に出ず、ずっとクオリティの高い動きで踊り続ける太鳳さん。

エキストラというものに初めて参加して、最初は「映画の撮影ってどんなふうに進むんだろう…!」とか、
「今日って俳優さんは誰が来てるのかな、近くで見れたりしないかな!」とか、
そういうミーハーな気持ちが前に出ていたんですが、

撮影が終わったあとは、もうひたすら、太鳳さんの踊りを見ることができたことに感動していました。
本当に本当に、躍動する太鳳さんをこの目で見られてよかった。

どのくらい感動したかって、エキストラ参加後の休日にディズニーシーに行く予定があり、
当時ちょうど新しいダッフィーフレンズのステラ・ルーさん(うさぎのバレリーナ)がお目見えしたばかりで、
私はぬいぐるみをお迎えしたときは名前をつける人なのですが、
「ステラ・ルーさん、立派なダンサーになるのよ…!」との願いを込めて、
我が家でのお名前を「タオ」にさせてもらったくらい。笑

とっても自分勝手な願望なんですが、
太鳳さんと泯さんの踊りの共演とか、
踊りや自分の体やそれにまつわる思考についての対談とか、
そういうのがすっごくすっごく見てみたいのです。

ということで、ふたつめの共通点。
泯さんと太鳳さんは、『躍動する体』
自分の体に向き合う人の思考回路がきっとあるはず。

3.【長く生きる故の】:篠田桃紅


最後は、篠田桃紅さん。
2021年に107歳で亡くなられた、書家の方です。

私が桃紅さんを知ったのは、テレビで放送されていたドキュメンタリーがきっかけでした。
当時すでに100歳を超えていらっしゃったのですが、
毎日着物を着て筆を持つ桃紅さんの所作や考え方やつむぐ言葉が大変美しく、一目惚れしました。

前回の文章にも書いたのですが、私は以前、『短命ゆえの人生の密度の濃さ』みたいなものを信じていて、
「自分もできるだけ早く何かを成さないと」と生き急いでいました。

その『短命ゆえの人生の密度の濃さ』という固定観念に疑問を持ったのが
「私が桃紅さんを知ったのが、桃紅さんが100歳を過ぎたタイミングであるという事実」で、
その疑問に決定的にNOを突き付けたのが、今回の泯さんの映画でした。

人は『長く生きるからこその重厚感』も出せるし、
『お酒のような・大きい岩のような・樹の年輪のような密度』を得ることもできる。

前回のエッセイでは、それを「泯さんはその生き証人のようで仙人みたいだ」と書いたのですが、
桃紅さんもその言葉がまるっと当てはまる方だなぁと思うのです。
そりゃあお二人に比べたら私なんてまだまだ若造なわけですよ…!

私はもともとお酒が好きなんですが、この数年でウイスキーにハマりまして、
ウイスキーなんて時間が味を美味しくする最たるお酒じゃないですか。

いろんな界隈で若い人の活躍はそれはそれはめざましく、
自分より年下の人たちがたくさん登場するようになり、
焦りを感じないわけではないんですけれども。

フレッシュなお酒でしか味わえない味もあるし、
じっくり時間をかけて作られた年代モノのお酒でしか味わえない味もあるし。

私はもう、短命の美味しさは通り過ぎてしまったと腹を括り、
これからは愛するウイスキーのような美味い酒になるしかないんです。

気をつけるのは、作品が出来上がる前に死なないようにすることと、作品を作り続けること。

泯さんが踊り続け、桃紅さんが書き続けたように、私は私の音楽と文章の生産を続けること。

ということで、共通点の3つ目。
泯さんと桃紅さんは、『長く生きるからこその重厚感』
希少価値とは、短命や早熟なものだけに宿らない。

おわりに


「好きになった理由なんて言葉にできないよ~言葉にしちゃ野暮ってもんだよ~」と言いたくなる自分もいるんですけれども、
今回はどうにか点と点をつないで、
「自分が好ましく思ったものにはなにか共通点があるんじゃなかろうか…?」という視点で見てみました。

「言葉にすると野暮」っていう側面だって私の中にもあるんですよ、もちろん。
一言で言っちゃえば、全部「エモくて好き」で事足りちゃいますし。

じゃあ、「エモい」という言葉を使わなかったら、どう表現できるのか?
エモいという単語を分解していくと、自分の中では他にどんな単語が結びついているのか?
泯さん・京さん・太鳳さん・桃紅さんに感じている「エモさ」は、同じなのか、違うのか?
違うエモさだったら、それはどんな言葉で違いを表せられるのか?

書き終わってみたら、上記のような実験的な面のある文章になって、とっても面白かったです。

私が考えている「言葉」って、「思考を整理する道具」でもあって、
思考を整理することで、また新たな気付きを得られることが多々あると思っていまして。

「好きという気持ちをできるだけ違和感を排除したいろんな言葉を用いて表現してみる」ことで、
自分の中の言葉の絵の具が増した感じがあり、より色彩豊かに立体的になったような気がしています。

「エモい」という単語だけだったら、黒い絵の具一色で終わっていたことが、
いろんな絵の具を使って、より複雑で美しい黒色が出来上がった、という感じです。
いや、実は久々に書くのがとっても大変だったのですが、その大変さを上回る、とっても楽しい執筆時間でした。



さて、次回のエッセイは、久々にヤツが帰ってきます。

そう、意外にもご好評いただいております、ひとり旅エッセイです!!!
(なぜかここのエッセイで一番読まれている…)
(好き勝手に好きなことを書きまくっているのに…それが一番人気とは…笑)

わたくし2022年も懲りずに早速ひとりUSJをキメてまいりました!!!
しかもUSJだけでなく、ちゃんと「「「関西観光」」」もしました!!!
ひゃっほう!!!
どうぞお楽しみに!!!

それでは、また次回!